2024年9月26日に静岡地方裁判所で行われた再審により、無罪判決となった袴田巖さんのドキュメンタリーです。この判決において、「5点の衣類」が「捜査機関によって捏造されたもの」だと判断されました。実際にズボンをはいても、膝から上に入らないものを証拠とされていたのでムチャクチャです。
30才で逮捕され58年後で無罪と、気の遠くなるような期間です。ほぼ人生全てです。死刑囚が無罪となったのは戦後5例目だそうです。
映画は2014年に再審決定となり、釈放されたところから始まります。お姉さんの袴田秀子さん宅に一緒に住みます。このお姉さんがエライ! 明るくいつも笑っています。独房にいた頃からの習慣なのか、袴田さんは日に12~13時間、家の中を散歩しています。お客さんが来ても歩き回っています。お姉さんは本人がしたいようにさせてあげてます。
シャバにも慣れて数年経つと外に散歩に出かけるようになります。交番の前では帽子をあげて挨拶し、かつて通ったボクシングジムの前では手を合わせます。フェザー級のボクサーで、アマでは国体に出場し団体3位、プロではフェザー級のトーナメントで優勝したこともあります。ボクシング解説で有名な郡司信夫さんやボクシング協会は面会に行って励ましていました。郡司さんによれば、ボクサータイプでパンチ力もあったそうです。
釈放中に世界ボクシング協会から名誉世界チャンピオンのベルトをリング上で受け取っています。そのリング上には現WBCチャンピオンの井上尚弥選手!もいます。
2018年には東京高裁が再審開始を認めない決定を出します。が、拘置の執行停止は取り消さなかったため釈放は維持されます。弁護側の特別抗告により、最高裁は2020年に高裁の決定を取消し差戻しとなります。そして、再審の結果、無罪判決となり、2024年10月8日に検察側の控訴断念の表明により無罪が確定しました。
これほどの理不尽なことはそうそうありません。無罪確定のとき、袴田さんは88才、姉の秀子さんは91才です。今日も袴田さんは散歩していることでしょう。