第318回 書評『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』

書評

日本ボクシング史上最高傑作と称される「井上尚弥」。令和5年1月に、WBAスーパー・WBC・IBF・WBO世界バンタム級王座の返上し、7月にWBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者のスティーブン・フルトンに、8回1分14秒TKO勝ちを収めて4階級制覇を達成しています。今年の12月30日には、東京・有明アリーナでスーパーバンタム級WBA&IBF世界同級2団体統一王者マーロン・タパレス(フィリピン)と4団体統一をかけて戦います。

著者の森合正範さんは、「週刊プレイボーイ」誌上で、試合前の井上尚弥選手にインタビューするのが恒例となっています。その後、井上選手は終わった試合についてはあまり多くを語らず、相手の評価もしません。過去よりも次を意識しているそうです。井上選手本人から強さの要因を引き出せないなら、対戦相手に聞くしかないということで、これまでの対戦相手にインタビューをしたのがこの本です。井上尚弥選手は25戦全勝(22KO)です。そのうち、10人にインタビューしています。

高校時代から強さは際立っており、スパーリング相手を求めて、お母さんが各ジムに電話して約束を取り付けていました。まだプロデビュー前の尚哉選手が、後に世界チャンピオンになる田口良一選手とスパーリングします。19才になったばかりの井上選手は田口選手を転がします。田口選手は試合でもスパーリングでも初のダウンです。

田口選手は絶望を感じますが、なんと世界戦を回避してまで、プロになった井上尚弥選手との試合を熱望します。1年後の2013年に日本タイトルマッチで両者ぶつかります。判定まで持ち込んで試合は井上選手が勝ちますが、逆に田口選手は株を上げます。今では、元世界チャンピオンの称号よりも、あの井上尚弥選手と判定までいったことの方が驚かれるそうです。

KOで倒した選手にはオマール・ナルバエスやノニト・ドネアのような伝説的な選手もいます。それらの選手が「井上尚弥」のことになると、自分の負け試合にかかわらず饒舌に語っています。井上尚弥選手自身は燃え尽きないように、目標は持たないようにしているそうです。天才が日々努力を積み重ねている姿が浮かび上がってきます。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

山崎 隆弘をフォローする
書評
シェアする
山崎 隆弘をフォローする
福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
タイトルとURLをコピーしました