第374回 書評『暗殺』

書評

1頁目に「この物語はフィクションである」とありますが、次の頁には、「時刻は2022年7月9日午前11時31分と記録されている。日本の元内閣総理大臣が奈良県の近鉄大和西大寺駅前の演説中に凶弾に倒れ、死亡した。享年六七だった」と安倍晋三元総理の暗殺そのままの情報が載っています。

フィクションということで、総理の名前は「田布施博之」となっていますが、暗殺時間・場所は事実です。田布施という名前も意味深です。山口県の田布施町は岸信介、佐藤栄作の出身地で、明治天皇にすり替わったと噂されている大室寅之祐の出身地です。安倍元総理は岸信介の孫です。

著者の柴田哲孝は『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞しています。出版元の幻冬舎に1年半前に原稿が持ち込まれ、見城徹社長が出版の可能性を検討して、その間、判明した事実等を反映した上で、出版されています。

安倍晋三元総理の暗殺については、CIA説や統一教会説などありました。どれも腑に落ちるものではありませんでした。しかし、個人的にはこの『暗殺』を読んで、とても腑に落ちました。日本の要人は名前を変えていますが、調べれば誰であるか分かるようになっています。今年7月13日、暗殺未遂に遭ったトランプさんなど、外国の要人は本名で書かれています。

第一部の冒頭で、「令和」の元号発表のところから始まります。そこで「令和」の本当の意味が明かされます。本来の「令」の意味は律と共に掟であり、格下に対する命令の旨意です。「和」は「和をもって」が連想されますが、もうひとつ重要な旨意は「和人」であり、元号に隠された意図は、日本人を掟で縛り、命令を下すという旨意を含んでいるそうです。それを元総理が主導したとし、それが暗殺の遠因にもなっています。

銃撃犯は容疑者一人で実行されたことになっていますが、この小説では容疑者とされた者はオズワルド役であり、実際の実行犯はもう一人いたとされています。使用された銃、弾丸についても詳しく、どうして元総理から弾丸が発見されなかったが明かされています。

ほとんどノンフィクション?と思えるような詳しい内容です。

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