
映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』(2018年)で、娘の信友直子監督が両親をで撮り続けたビデオを編集したものです。陽気でしっかり者の母親がボケていき、それまで家庭の事は一切しなかった父良則さんが90才を超えてから、掃除、洗濯、料理までするようになり、直子さんを驚かせました。
続編の映画『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえり お母さん』(2022年)では、お母さんに脳梗塞が見つかり、片道1時間、毎日歩いてお見舞いに行く良則さんに凄みを感じさせます。
映画2本の続編ともなる2024年9月までの近況を追った信友直子さんの著作です。娘としてどうしてこんなお父さんと結婚したの?と思えるくらい存在感がありませんでした。そのお父さんが、お母さんの痴呆症を契機に変わり始め、お父さんを再認識していくのがリアルです。戦争により大学で英語を学ぶことを断念せざるをえず、友人がたくさん亡くなり、喪失感により40才近くまで独身でいました。周りがみかねて見合いにより結婚します。冗談好きの奥さんのお陰で生気を取り戻していきます。そのお返しにとまめまめしく認知の奥さんを世話していきます。
さすがに2024年9月の近影では映画から更に老けたかなと見えます。会社の同僚時代からの親友が101才で2023年に亡くなります。奥さんに4年間に先立たれ、親友も亡くし、落ち込む良則さんを励まそうと、同じ1920年生まれで尾道市の『102歳、一人暮らし』『103歳、名言だらけ。』で有名な石井哲代さんに会わせようとします。
事前に哲代さんの2冊の本を読んでおいて、在住の呉市から哲代おばあちゃんに会いに行きます。玄関先で待っていた哲代おばあちゃんをみつけるや車から飛び出してガッチリと手を握り合います。旧知の間柄のように見えますが、初対面です。半年先に生まれた名物おばあちゃんから「ここにお姉さんがおるんじゃけ、お父さんも頑張りんさい!」と励まされ、「ハイ!」と素直に応える良則さん。本を読みながら、とても感動しました。
1960年生まれの私より40歳も年上のお二人です。人生、まだまだこれからの思いを強くしました。