借入金の返済原資 第238回

貸借対照表

新型コロナウィルス感染症特別貸付により日本政策金融公庫、商工組合中央金庫の政府系の金融機関、あるいは市中の金融機関から借り入れている会社が多くなってきました。

休業要請の対象となり、売上ゼロのなったようなところは資金繰り上、借り入れなければキャッシュアウトしてしまい、背に腹はかえられません。今回の制度融資は、保証人なし、金利負担実質ゼロなどと、かなり優遇されたものとなっています。従来の借入金と入れ替える形で融資を受ける場合もあるようです。返済条件については、例えば3年間返済なしで、10年内に返済するような、通常では考えられない有利な条件となっています。

しかし、借りたお金はいつか返済しなければなりません。会社の場合、返済原資は基本的には利益しかありません。利益を計上するということは、税務上の繰越欠損金がなければ利益に応じて税金を払わなければなりません。建物、構築物、機械などの固定資産の減価償却費を計上している場合には、利益+減価償却費が返済原資となります。ですから、金融機関がお金を貸し出すときに、利益+減価償却費を返済能力の判断基準とします。

ここでは、減価償却費はないものとして考えると、1億円借りた場合、1億円の利益だけでは足りません。毎年度の税金を入れなければなりません。現在の実効税率は34%ですので、1億円の場合、税金で3千4百万円支払い、残りの6千6百万円が返済に充てられます。利益から3分の1を差し引いた3分の2が返済原資となります。

ということは、逆算すると1億5千万円の利益であれば、5千万円税金を支払って、残りの1億円で返済することになります。1億円を返済するためには、借入金額の1.5倍の1億5千万円の利益が必要ということです。

返済するためには黒字でなけばならず、赤字であれば返済原資はありませんので、返済のために更に借入金は増えていくことになります。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所

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休業要請の対象となり、売上ゼロのなったようなところは資金繰り上、借り入れなければキャッシュアウトしてしまい、背に腹はかえられません。今回の制度融資は、保証人なし、金利負担実質ゼロなどと、かなり優遇されたものとなっています。従来の借入金と入れ替える形で融資を受ける場合もあるようです。返済条件については、例えば3年間返済なしで、10年内に返済するような、通常では考えられない有利な条件となっています。

しかし、借りたお金はいつか返済しなければなりません。会社の場合、返済原資は基本的には利益しかありません。利益を計上するということは、税務上の繰越欠損金がなければ利益に応じて税金を払わなければなりません。建物、構築物、機械などの固定資産の減価償却費を計上している場合には、利益+減価償却費が返済原資となります。ですから、金融機関がお金を貸し出すときに、利益+減価償却費を返済能力の判断基準とします。

ここでは、減価償却費はないものとして考えると、1億円借りた場合、1億円の利益だけでは足りません。毎年度の税金を入れなければなりません。現在の実効税率は34%ですので、1億円の場合、税金で3千4百万円支払い、残りの6千6百万円が返済に充てられます。利益から3分の1を差し引いた3分の2が返済原資となります。

ということは、逆算すると1億5千万円の利益であれば、5千万円税金を支払って、残りの1億円で返済することになります。1億円を返済するためには、借入金額の1.5倍の1億5千万円の利益が必要ということです。

返済するためには黒字でなけばならず、赤字であれば返済原資はありませんので、返済のために更に借入金は増えていくことになります。

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1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

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