元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。
土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために、土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられます。この特例は次の2つがあります。
①対価補償金等で土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例と、②譲渡所得から最高50百万円までの特別控除を差し引く特例の2つでいずれかを選択することになります。
①の場合、売った金額より買い換えた金額の方が多いときは所得税の課税が将来に繰り延べられます。売った年については譲渡所得がなかったものとされます。一方、売却した金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。
①の特例を利用する際に留意すべきことは、代替で取得した資産を売却した土地建物を10年後、20年後に売却したときに、そのことを失念しないことです。代替資産を取得したときの取得価額が譲渡原価とはなりません。
代替資産を売却した時には、収用された土地建物の当初の取得価額を把握していなければなりません。それが代替資産を売却したときの譲渡原価となります。
例えば、10百万円で取得した土地が100百円で収用されたとします。この時に②の50百万円控除を使用すれば、100-10-50=40百万円の譲渡所得に対して課税されます。
①を使えば収用時には譲渡所得はなかったものとされますので課税は繰り延べられます。代替取得した土地を売却した時に、譲渡原価は10百万円として譲渡所得を申告します。土地の値上がり程度により、多額の譲渡所得税となることもあります。50百万円控除が使えないだけに尚更です。
代替資産の取得は単なる課税の繰延べだけでなく、50百万円控除が使用できずに、将来に多額の課税となる可能性がありますので、あまりお勧めできません。