造園家で環境再生医のの矢野智徳さんを2018年5月~2021年10月までを追ったドキュメンタリーです。矢野さんは1956年生まれで北九州市出身、現在は山梨県上野原市在住です。制作・監督・撮影の前田せつ子さんは、ナウシカのような矢野さんに出会い衝撃を受けます。
「虫たちは葉っぱを食べて空気の通りをよくしてくれている」「草は根こそぎ刈ると反発していっそう暴れる」「大地も人間と同じように呼吸しているから、空気を通してやることが大事」という言葉に感銘し、屋久島、気仙沼、安曇野等、矢野さんの現場を撮影していきます。
屋久島では荒波が打ち寄せる浜に、弱ったガジュマルの木が立っています。「屋久島の生態系のエネルギーでやっても追いつかないぐらい、人の負のエネルギーの方が大きいから、こういう状態になる」と言います。矢野さんは手作業を始めます。ノコ鎌でガジュマルの周りに空気が流れるよう草を払い、海へと流れる水みちに穴を掘っていきます。それだけで淀んでいた水は流れ出し、ガジュマルは息を吹き返します。
確かに、炭火をつける時にも、空気が通りやすいように木炭を積み上げていきます。人間の身体も、どこかが詰まると病気になります。胆管が詰まれば胆管炎となり、便秘になれば万病の基となります。ダムや、道路などコンクリートで固めているため、水が流れず段々と溜まっていき、その水を吐き出すために土砂災害になると説きます。水を流す、空気を流すために、現場にある廃材、流木を利用していきます。
「杜」とは「この場所を傷めず、穢さず、大事に使わせてください」と人が森の神に誓って紐を張った場であり、それを守る人を「杜人」というのだそうです。考えさせられる映画です。