令和4年12月16日に、令和5年度税制改正大綱が公表されました。これによれば令和5年10月1日より開始する消費税のインボイス制度について、「2割特例」「少額特例」「少額な返還インボイスの交付義務免除」等の負担軽減措置が講じられています。このうち「少額特例」とは、
①基準期間における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、
②令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、
③帳簿の保存による仕入税額控除を認めるというものです。
①の「特定期間」とは建物の売却などで急激な課税売上高の変動に対応できるように設けられたもので、前事業年度の開始以後6月の期間となります。
②の「1万円未満」については税込価額で判定することになります。その金額の判定単位は、課税仕入れに係る1商品ごとの金額により判定するのではなく、1回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定することになります。
次に「少額な返還インボイスの交付義務免除」とは、売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除するというものです。これは、全ての事業者が対象であり、適用期限のない恒久的な措置となります。
この見直しにより、売手負担の振込手数料に係る事務負担が解消され、小売業における商品の返品でも返還インボイスの交付義務が免除されることになります。
ただし、売手負担の振込手数料の会計処理については、「売上値引」で処理すれば返還インボイスは不要となりますが、「支払手数料」で処理していれば、買手に振込手数料を立替払いしてもらったと認識され、①振込手数料に係わるインボイスと②立替金精算書を合わせて保存することで、仕入税額控除が認められます。「売上値引」で処理しましょう。