第380回 映画『恋するピアニスト フジコ・ヘミング』

映画

2024年4月21日に92才でお亡くなりなったフジコ・ヘミングさんのドキュメンタリーです。2023年10月26日に天神アクロスの福岡シンフォニーホールでソロコンサートを聴いたばかりです。昨年の11月に自宅で転倒され、リハビリ中で今年の3月には膵臓ガンと診断されていました。今となっては福岡が最後から2番目のソロコンサートとなりました。生で聴くことができてラッキーでした。

映画の中で、「どうやって死のうかしら」と言うくらい、コンサートでは素晴らしい演奏で、とても近々亡くなるような感じではありませんでした。。年寄りの転倒は怖いですね。最近はワクチンの影響によりターボガン(いきなりステージ4)の人が増えています。

2020年に公開の予定でしたが、コロナのパンデミックによりコンサートが中止となり、阿佐ヶ谷教会での無観客ライブ、大戦中に疎開していた岡山の学校での演奏から始まります。ツアーが再開し、横浜、パリのコンセルヴァルトワールド劇場でのコンサートと続きます。コンセルヴァルトワールドはベルリオーズ、ドビュッシー、ラヴェルを輩出したところで憧れの場所だったそうです。

車の中での会話など、フジコさんの声がたくさん収録されています。ドイツの音楽学校では機械的に弾くのがいいと指導され、随分と反発し、人前で弾くのがイヤになった頃もありました。フジコさんにとっては、演奏は「物語」を語っているように聴こえてこそで、今はその演奏が認められ、とても嬉しいとのことです。

フジコさんはニャン好きでたくさんのニャンが出てきます。なんと、90才になっても恋をしているそうです。まさにタイトル通りの「恋するピアニスト」です。大事にしているものは、どれも高価なものではなく、手作りの想い出の品を大事そうに披露してくれます。

若い頃はドイツでも日本でも随分といじめられたそうです。「何度も裏切られました」としみじみ述懐しています。「昔は自分よりうまい人がいると嫉妬していたけど、今は自分に自信があるから気にならなくなった」そうです。自宅の窓から「歩いている人、一人一人に幸せを祈っている」フジコさんでした。

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