第308回 資産管理の基本は現金実査

キャッシュを残す経営

会計監査では、証拠力が強いものは、実査、立会、確認です。実査とは、実際に現金などを数えることであり、最も強い証拠力となります。立会とは、在庫の棚卸をしているところに立会うことであり、確認とは、銀行、証券会社に残高、取引を監査人が直接、確認することです。期末監査では、これらの監査手続を実施します。

期中監査での支店や、子会社などの往査では、まずは現金の実査をします。税務調査では突然ということはたまにはありますが、監査では事前に日程調整をして伺いますので、現金実査をして帳簿残高と一致しないことはまずありません。

税務調査では、申告後の決算書の調査であるため、現金実査を受けたことはありませんでしたが、最近の調査で初めて、現金実査を受けました。税務署でも世代交代が進み、定年近くの調査官と、20代の若い調査官のペアが多くなりました。新人研修の意味合いもあって、若い調査官に現金を数えさせていました。そこの会社では毎日、現金実査をして社長・会長に報告していますので、当たり前のように合いました。

経理の専任担当者がいない中小企業の場合、合わないことはままあります。たまに記帳資料に万札が混じっている会社もあります。近頃はキャッシュレス化が進み、個人でもあまり現金を使うことはなくなってきました。しかし、資産管理では現金を数えることは基本の中の基本です。

銀行口座にたくさんの残高があると、投資信託はNISAの営業を受けます。それを受けないように、会社によっては貸金庫を銀行から借りて、そこに現金を保管することを勧めています。バラの現金だと数えるのが大変ですが、100万円ごとの帯封だと数えやすいです。

銀行が発行する借入金の返済予定表はよくみますが、それと同様に、貯金の推移表はエクセルで作ってみます。毎月、これだけ貯めていけば、10年後、20年後、自分が死亡する時の残高がシミュレーションできます。生きていればの話ですが、時間が強力な因子になることが判ります。死亡時に残す資産の目安ともなります。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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