第312回 決算対策は要らない

キャッシュを残す経営

決算日が来る前に、決算対策としてお打合せをします。ここ最近は、特別な対策はほとんど不要の場合が増えてきました。利益が計画よりも多く計上され、従業員の方に還元する意味での賞与の計上は有用です。社員のモチベーションにも係わってきます。その場合は、決算日までに支払っていなければなりません。そうでなければ、決算日までに伝えたことを証明するものが必要となってきます。

他には、保険料を支払うことがありますが、倒産防止共済は800万円まで掛け金を積み立てることができ、全額損金となりますので、利用している会社は多くあります。取引先が倒産したときには、共済金の借入が無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで可能です。この本来の目的で掛ける分にはいいと思いますが、単に税金の支払を先に延ばすだけのためにするのは、お勧めしていません。

中小企業は、通常の実効税率34%のところ800万円までの利益(課税所得)までは、実効税率24%と約10%低くなります。ですので、課税の繰延をするのではなく、その都度、その年度で支払っていく方が資金的にも安定します。反対に、800万円が一度に課税となる方が大変です。全期間を通してみれば、少なくとも節税にはなっていません。

気をつけなければならないのは、利益が出たからと、余分な買い物をすることです。企業努力により残ったせっかくの利益を、無駄なものを買うことによって減らすのは、とてももったいないと思います。本当に必要なものはその都度、検討して購入しているはずです。

たとえ800万円利益がでても24%の税金ですので、192万円の法人税・住民税を支払えば、608万円残ります。800万円消費すると手残りゼロです。例えば、これを10年繰り返せば、6,080万円の預金になります。決算時にたくさん買物するとその支払と税金支払い時期が重なり、資金不足にもなりかねません。

賞与以外の決算対策は必要ないのではと思う今日この頃です。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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