第381回 補助金の功罪

キャッシュを残す経営

補助金は、国や自治体などが政策を推進するために政策目的に合った取り組みを支援するために提供する、返済する必要のない資金であり、もらえるお金です。経済産業省が主に補助金と言い、厚生労働省が助成金という言葉を使っています。

助成金の審査が形式的な要件を満たしているか否かの審査であるのに対し、補助金の審査は、基本的には提案の中身の審査になり、申請者(提案者)が全員採択されるということはありません。

例えば、「小規模事業者持続化補助金」は小規模事業者が経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画を作成した上で行う販路開拓や生産性向上の取組を支援するものです。補助金は最大50万円で補助率は支出の2/3以内となっています。

また、「IT導入補助金」は、中小企業の業務効率化やDXの推進、セキュリティ対策に向けたITツール等の導入費用を支援するものです。補助金は最大450万円で、補助率は1/2となっています。この補助率がくせ者です。その補助金を受けるためにまず投資をしなければなりません。「IT導入補助金」の場合、最大450万円の補助を受けようとするならば、900万円の投資をしなければなりません。その資金は銀行から借り入れることになります。

お客様で補助金を受けている事例を見ていると、結果的に無駄な借入をして、無駄な投資となってしまったということがあります。更にその投資により不良在庫を抱えることもあります。

補助金といえども、原資は税金です。節税のためといいながら、無駄な支出しているのと何ら変わりがありません。本当にビジネスに必要ならば、節税とは関係なく、支出しなければなりませんし、補助金を受ける意味もあると思います。ただ補助金がもらえるからと申請して、替えって資金繰りが苦しくなってしまうことがあります。本当に必要なものか否かをよく検討しましょう。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
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