収用等により土地建物を売った時の特例 第194回 

元気ですか! 福岡市天神の公認会計士・税理士の山崎隆弘です。

土地収用法やその他の法律で収用権が認められている公共事業のために、土地建物を売った場合には、収用などの課税の特例が受けられます。この特例は次の2つがあります。

①対価補償金等で土地建物に買い換えたときは譲渡がなかったものとする特例と、②譲渡所得から最高50百万円までの特別控除を差し引く特例の2つでいずれかを選択することになります。

①の場合、売った金額より買い換えた金額の方が多いときは所得税の課税が将来に繰り延べられます。売った年については譲渡所得がなかったものとされます。一方、売却した金額より買い換えた金額の方が少ないときは、その差額を収入金額として譲渡所得の金額の計算を行います。

①の特例を利用する際に留意すべきことは、代替で取得した資産を売却した土地建物を10年後、20年後に売却したときに、そのことを失念しないことです。代替資産を取得したときの取得価額が譲渡原価とはなりません。

代替資産を売却した時には、収用された土地建物の当初の取得価額を把握していなければなりません。それが代替資産を売却したときの譲渡原価となります。

例えば、10百万円で取得した土地が100百円で収用されたとします。この時に②の50百万円控除を使用すれば、100-10-50=40百万円の譲渡所得に対して課税されます。

①を使えば収用時には譲渡所得はなかったものとされますので課税は繰り延べられます。代替取得した土地を売却した時に、譲渡原価は10百万円として譲渡所得を申告します。土地の値上がり程度により、多額の譲渡所得税となることもあります。50百万円控除が使えないだけに尚更です。

代替資産の取得は単なる課税の繰延べだけでなく、50百万円控除が使用できずに、将来に多額の課税となる可能性がありますので、あまりお勧めできません。

 

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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