第293回 「雑所得」が明確化され事業所得の赤字として所得通算することが不可に

確定申告

令和4年10月7日に、国税庁は副業収入の所得区分に関する改正を公表しました。令和4年分以後、今年の所得税から適用されます。まず、雑所得の範囲が明確化されています。すなわち「公的年金等に係る雑所得」「業務に係る雑所得」「その他雑所得」の3つに区分されます。

「その他雑所得」の例示として新たに「譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得」が加えられました。「譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得」には、例えば、暗号資産取引による所得等が該当するとされています。

また、「業務に係る雑所得」には、「営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得」が含まれることが明確化されています。これはデジタルコンテンツの販売による所得などが該当します。

更に「事業所得」と「雑所得(業務に係る雑所得)」の判定基準も示されています。すなわち「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」としています。

所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、業務に係る雑所得に該当するとなっています。ただし、帳簿書類の保存があっても、次の場合には、自動的に事業所得に区分されるわけではなく、個別に判断するとしています。

① その所得の収入金額が僅少と認められる場合

② その所得を得る活動に営利性が認められない場合

①は、収入金額が300万円以下で主たる収入に対する割合が10%未満の場合に「僅少」に該当します。②は、所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合が「営利性が認められない」となります。本来は事業的規模といえない副業収入を赤字の事業所得として申告して、給与所得と損益通算するという節税スキームを防ぐためのようです。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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