第321回 令和6年3月15日締切の確定申告の改正点

確定申告

今回の確定申告での改正点はほぼありませんが、配当所得の申告について改正があります。昨年までは、住民税の申告不要制度を利用して「所得税では配当所得を申告するが、住民税では配当所得を申告しない」という選択も可能でした。今年からは配当所得を、所得税・住民税ともに申告するか、所得税・住民税ともに申告しないかのいずれかになります。所得税で申告した内容がそのまま住民税にも反映されます。

上場株式の配当については、申告しなくてもよいことになっています。ですので、証券会社の担当者からは、申告は不要ですと言われ、申告していない方が多くおられます。申告しなくてよいというのは、既に配当収入に対して所得税・住民税が20.315%源泉されているためです。

ただし、その人の年間の課税所得が695万円以下ならば、申告することで所得税は還付されます。収入ではなく課税所得が695万円を超える人というのは、中小企業では社長クラスでなければそうはおられません。また不動産収入等があれば超えることもあります。

うちの事務所では、お客様に配当所得がある場合、申告する・申告しないの両方で計算して、有利な方を選択しています。総合課税の場合は、配当控除(配当所得の10%)が適用できることも、申告した方が有利になる要因となっています。申告しない場合は分離課税となり、配当控除は適用できません。ただ、証券会社から申告は不要と言われているので、証券会社が発行する「年間取引報告書」を捨てている方もおられました。捨てずにこちらに渡して頂くよう、お願いしています。

改正により、今回から所得税で申告した内容がそのまま住民税にも反映されることになります。合計所得が増加すると、合計所得をもとに計算される国民健康保険料・介護保険料などの金額にも影響する可能性がありますので、これらも考慮して配当所得を申告するか、しないかを選択する必要があります。

年々複雑になってきました。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
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