マイホーム売却損失の損益通算 第252回

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今年もいよいよ確定申告のシーズンとなってきました。コロナ禍により、1月に予定されていた税務調査が延期となり、緊急事態宣言中の調査はなさそうです。12月決算の法人の決算申告と、個人の確定申告に集中できます。

所得税の確定申告に係わることということで、マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例です。この特例は、住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき、要件を満たせば、その年の給与所得や事業所得などと損益通算することができます。繰越控除は翌年以後3年内に繰越して控除することができます。

主な要件としては、住宅ローンが償還期間10年以上の残高があり、マイホームの譲渡金額が住宅ローン残高を下回っている場合です。マイホームを売却しても、住宅ローンが残っているときの、救済措置の意味合いがあるのでしょう。

そのことは、譲渡損失の損益通算の限度額にも表れています。国税庁のHPの例では、6千万円で買ったマイホームを2千万円で売却して△4千万円の譲渡損失が発生しています(減価償却は考慮せず)。住宅ローンの残高は3千万円残っており、売却代金で返済してもまだ1千万円の住宅ローンが残ります。この場合、1千万円が損益通算できる限度額となります。

この特例では、親子や夫婦など特別の関係がある人に対してマイホームを売却した場合は、損益通算及び繰越控除の両方が適用できません。住宅借入金等特別控除制度とマイホーム譲渡所得の3千万円控除は併用できませんが、この特例と住宅借入金等特別控除制度は併用できます。やはり救済の意味合いがあるようです。

また、繰越控除が適用できない場合として、合計所得金額が3千万円を超える年は、その年度のみ適用はできないこととなっています。

 

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
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