ワン・ビン監督の『死霊魂』(中国 2018年)です。上映時間8時間半! 11月3日の文化の日に、事務所近くのKBCシネマで、朝11時10分から20時までの上映を観ました。途中、2回の休憩をはさみます。ただし1回の休憩時間が10分程度です。昼は事務所に戻って芋をかじり、夜は近所の「玄」で蕎麦をかきこみました。
中国共産党の「反右派闘争」で弾圧された人々のインタビューで構成されています。120の証言と約600時間のラッシュ映像を8時間にまとめています。撮影は2005年と2016年、2017年に追加され、足かけ12年になります。
1950年代後半から1960年代前半の中国政府が「右派」と認定した人たちが収容所に入れられます。しかし、インタビューを聞く限り、ほとんどはめられて、認定されたような人ばかりです。「右派」とみなすパーセンテージが与えられ、それを満たすように、次から次と収容所に入れられたことが、インタビューにより明らかになります。
教授や先生なども多く収容の対象となっています。強制労働させられますが、中国全土が大飢饉にも見舞われ、餓死した人がほとんどのようです。1日当たり250グラムの食料しか与えられず、バタバタと餓死していった様子が証言されます。今は飽食の時代で、日本で餓死ということはほぼ考えられません。しかし、人間は食物を与えられないと死ぬという当たり前のことが改めて知らされます。
3,000人のうち生き残ったのは10名程度です。生き残った人は料理担当が多い事実に納得してしまいます。料理に囲まれているので、スキを盗んでは食べていたようです。また、インタビューを受けている人たちが皆明るいことに驚きました。ニコニコ笑いながら話をしています。ノンキに考えて明るいというのも生存には大事ということでしょう。
意外と家族が会いに来ることもできたようで、奥さんのインタビューもあります。収容所側の人も、ここだけは監督の顔出しでインタビューしていました。命の危険に侵されながら、強制収容されることに比べれば、長時間の上映など比較になりませんが、一気に見るのも大変でした。