第301回 インボイス制度に係る令和5年度税制改正 上

消費税

令和4年12月16日に、令和5年度税制改正大綱が公表されました。これによれば令和5年10月1日より開始する消費税のインボイス制度について、「2割特例」「少額特例」「少額な返還インボイスの交付義務免除」等の負担軽減措置が講じられています。このうち「少額特例」とは、

①基準期間における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者が、

②令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、

③帳簿の保存による仕入税額控除を認めるというものです。

①の「特定期間」とは建物の売却などで急激な課税売上高の変動に対応できるように設けられたもので、前事業年度の開始以後6月の期間となります。

②の「1万円未満」については税込価額で判定することになります。その金額の判定単位は、課税仕入れに係る1商品ごとの金額により判定するのではなく、1回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定することになります。

次に「少額な返還インボイスの交付義務免除」とは、売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除するというものです。これは、全ての事業者が対象であり、適用期限のない恒久的な措置となります。

この見直しにより、売手負担の振込手数料に係る事務負担が解消され、小売業における商品の返品でも返還インボイスの交付義務が免除されることになります。

ただし、売手負担の振込手数料の会計処理については、「売上値引」で処理すれば返還インボイスは不要となりますが、「支払手数料」で処理していれば、買手に振込手数料を立替払いしてもらったと認識され、①振込手数料に係わるインボイスと②立替金精算書を合わせて保存することで、仕入税額控除が認められます。「売上値引」で処理しましょう。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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福岡市東区箱崎の公認会計士・税理士 山崎隆弘事務所
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