事業承継税制のデメリット 第248回

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

平成30年1月より事業承継税制の「特例」が施行されています。「原則」では雇用の8割維持等が求められていましたが、「特例」では雇用維持要件を満たせなかった場合でも、納税猶予が可能となっています。

この場合には、「認定経営革新等支援機関」に認定されている税理士等が意見を記載した書類を都道府県に提出することになります。また、経営環境変化に応じた減免措置も「特例」には設けられています。特例措置の適用を受けるためには、「特例承継計画」を令和5年3月31日までに都道府県知事に提出しなければなりません。

今年、お客様で3件ほど事業承継税制の適用を検討しました。結果、3件ともに申請を見送っています。事前に対策する場合に事業承継税制において納税猶予となるのは、現在持っている株を一括して贈与した場合の贈与税です。

例えば、ある会社では贈与税が1億円だったとします。条件が緩和されたとはいえ、この条件が満たせなかった場合は、この1億円を一括で納税し、更にそこまでの延滞税までを納付しなければなりません。今年のコロナ禍のように、経営環境において何が起こるのかわかったものではありませんので、当然、リスクがあります。

相続が発生した場合の相続税を計算すると、例えば90百万円だったりします。一括で贈与の場合、4,500万円以上は55%の最高税率となりますので、多額の税額が発生します。

それに対して、相続税は6億円超の場合に最高税率55%となり、1~2億では30~40%の相続税率のため、株式だけでなく不動産、金融資産を含めても、株の一括贈与の税額まではいかないことが多いようです。

相続の発生までまだ期間があるとすれば、この例での1億円の贈与税を猶予してもらうよりも、暦年で贈与していく方が安く上がります。暦年で贈与していけば、その都度、低い税率で完結していきます。相続発生時に3年以内の贈与は相続財産として組み入れらるということはありますが、長い目で見れば、暦年贈与は最も効果的な相続対策になります。但し、これは金融機関、コンサル会社の儲けとは関係ありませんので、あまり紹介されることはないようです。

※投稿時の法制度を基に記載しております。詳しい内容については当方にご相談ください。

→福岡市中央区天神の公認会計士・税理士山崎隆弘のホームページはこちら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加