第297回 令和5年度税制改正大綱の特徴

税制改正

令和4年12月23日「令和5年度税制改正の大綱」が閣議決定されました。今回の特徴は「Ⅱ 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」が加えられていることです。新聞報道でもありましたが「我が国の防衛力の抜本的な強化を行うに当たり、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保する」として「令和9年度に向けて複数年かけて段階的に実施することとし、令和9年度において、1兆円強を確保する」としています。

法人税については「税率4~4.5%の新たな付加税を課す」とし、「中小企業に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除することとする」としています。中小企業の場合は、課税所得8,000千円までは15%の法人税率ですので、8,000千円×15%=1,200千円の税額です。5,000千円の税額まで残り3,800千円です。課税所得8,000千円超は23.2%の法人税率となりますので、課税所得は3,800千円÷23.2%=16,379千円を足し、計24百万円超の課税所得の場合に、付加税が課せられることになるようです。あくまで今後の方針ですから、政権によって変わることも考えられます。

「Ⅰ 令和5年度税制改正」のうち、「二 資産課税」について、「資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築」の項目が設けられています。『週刊ダイヤモンド』によると、「この言葉が意味するのは、生前贈与を使った相続税の節税は許さない」ということになるとしています。具体的には相続時精算課税制と暦年贈与について見直しとなっています。

暦年贈与については、2024年1月1日以後の贈与から、現在、相続開始前3年以内分が相続税の課税価格に加算されるところが、相続開始前7年以内となります。2023年までは従来通りです。これに対して相続税精算課税制度は、従来はこの制度を使用すると、暦年贈与ができなくなるためあまりお勧めしていませんでした。ところが、今度の改正大綱では、相続税精算課税制度を使用しても、暦年で110万円の基礎控除が設けられています。しかも、この110万円は相続時には持ち戻されないことになっています。暦年贈与の場合は、基礎控除の110万円を含めて持ち戻し計算されるのと対照的です。

この記事を書いた人
山崎 隆弘

山崎隆弘事務所所長
公認会計士・税理士

1960年福岡県生まれ。福岡市在住。29歳で公認会計士試験に合格。以来、中央青山監査法人(当時)で10年間勤務。会計監査、システム監査、デューデリジェンスに従事し、上場企業などの主査を務めるが、39歳のときに胆管結石による急性胆管炎を発症する。結石の除去に入退院を繰り返し、監査法人を退職。

1年間の休養後、41歳で父親の会計事務所に入所。44歳のときに同事務所を引き継ぎ、公認会計士事務所を開設。同時に妻二三代が入所。「ビジネスと人生を楽しくする会計事務所」がモットー。家族で踊る「会計体操」は、NHK・フジテレビ・KBC・RKB・読売新聞・西日本新聞など多数のメディアで取り上げられる。

著書に『年収と仕事の効率を劇的に上げる 逆算力養成講座』『なぜ、できる社長は損益計算書を信じないのか』。

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